東京高等裁判所 昭和32年(ネ)1874号・昭32年(ネ)2313号 判決
ここにいわゆる時価とは、固より地上物件の材料の価額でなく地上物件そのものの価額を意味するものであるが、これが算定にあたつては、特段の事由のない限り地上物件のみの価額を基準としてこれを定め、その存する土地の使用権の価額をこれに算入すべきでない。けだし買取請求権者は本来右土地の使用権を有しないものであり、またたとい事実上建物の売買取引においてその目的たる建物の存する土地の場所的利益が売買代金を決定するにつきしんしやくされているとしても、右場所的利益なるものはひつ竟土地そのものがもつている価値であつてその上に存する建物そのものの価値ないしこれから流れ出るものであるということができないからである。従つて建物があるためその敷地たる土地の価値がましたというような特段の事由がある場合は別であるが、そうでない限り建物自体の価額を基準として算定すべきである。
(大江 猪俣 脇屋)